2005年、
リリース日を改めて見てみると、私は大学卒業間近、卒業研究で毎日深夜まで実験し、吹雪の中歩いて帰ったりしていた頃だった。
だからなのか「TITLE」を買ったばかりの頃の記憶はほぼなくて、数ヶ月後、慣れない満員電車の中ヘッドホンで自分を塞ぎ、陶酔するために聴いていた記憶から始まる。
…と、思い出話をし始めるとうっかり長くなってしまうのが私とストレイテナーの関係なので割愛するが、付かず離れずの時期もあればベッタリだった時期もあるテナーとの間柄で定期的に自ら選んで聴いていたのは「TITLE」でした。
「TITLE COMEBACK SHOW」
その開催を知った時、久々に素直に嬉しいと思った。
ホリエさんの事前インタビューを読んで楽しみに待った。
一滴の不安はあれど、そんなもんファンならみんな持っただろって感じだった。
有難い事に開始が21時からだったので、子を寝かしつけてからPCを立ち上げても間に合うくらい、なんなら立ち上げた後ちょっと時間があるからアイロン掛けでもしようかと思った矢先にリハのためにメンバーが出てきてヌルッと「Melodic Storm」を披露してくれちゃう場面に出くわす事が出来たくらい、時間に余裕あり。心から感謝。
さて、前置きが長くなりましたが、
ここではテナモバクイズに答える時に送るため久々に真剣に綴った想いの丈、ライヴの感想文が妙に気に入ってしまったので、それに加筆修正した物を残しておこうと思います。
「どうなるんだろう」
という楽しみの中にも一滴の不安がありましたが、それは完全なる杞憂でした。
普通のライヴとは全く違う。
普通の、これまでのライヴを模したものであったなら私はそれ程感動出来なかったと思います。でも開場して現場の雰囲気を見て、そしてリハを見て、立ち位置から音像まで全てがこの状況に合わせて整えられているんだと分かった瞬間、私のスイッチが切り替わりました。真っ直ぐに楽しめるな、これは、と。
メンバー四人が向き合うように円になったポジショニング、その真ん中やメンバーそれぞれの傍らに置かれた電球の照明、床に敷かれた綺麗なラグ…
アコースティックライヴでもするのかな?という雰囲気ムンムンの中、反響のない、デッドな音響。
「レコーディングみたいな環境」とお話ししてくれたのはホリエさんだったかな。
ジャーーーンと鳴らしてファンの声と混ざり合って鼓膜を揺らすライヴの音とは違う、
彼らが鳴らした音が生まれたままの形で、その瞬間、私の鼓膜を揺らしに来てくれる。
確かに緊張感は伝わってきた。でも画面のそっち側もこっち側も少なからず緊張していて、そんなお互いの気持ちを想いながら見た状況は、アウェイでのライヴの時のバンドとファンの関係あたりと変わらないなと感じました。共通する部分あり、全く違う部分あり。その空気感がとても「今現在」を表しているようでした。
印象に残った曲と言えば、MCの影響もあっての「REBIRTH」
歌詞の広がりをMCのおかげで感じつつ歌われる言葉の端々の響きがとても心地良くて、特に「音もなく濡らすよ」の「ら」から「す」への繋がりや、また「す」から「よ」へのコブシ感など、歌心を身にまとったホリエさんの歌の進化にまず痺れました。
バンド全体の音像も一粒一粒がはっきり聴こえるのにバラバラではなく一塊として聴こえてきて、特に私はドラムが好きなので、どうしてもBメロは無意識にバスドラやフロアタムがメインでドコドコ低音で鳴っている所に耳が行きがちですが、そんな個人的バランスでもきちんとメロ隊の音が刺さるほどに届いてくるのが最高でした。
これまで何となくでしか聴いてなかったんだな、と改めて感じ、まだまだ掘り下げる事ができる、深く広がっているんだ「TITLE」は。
そしてもう一つ、
「LOVE RECORD」の「自分の足で歩く」をシンプルに「あるーーーく!」と歌われたのがとても良かった。
テナマニの時「あるーくあるーくあるーく」にしてしまったの、私には厚化粧で台無しと感じていたので。テナマニ時点で最高に美人に化けて出てきてくれた「LOVE RECORD」でしたが、今回は更に「やっと素材の美しさに気付いてくれたかー!」と膝を打ってしまいました。
元々「LOVE RECORD」もそれ程気になる曲ではなく、テナマニで「大好き」に躍り出た存在なので、それが更にブラッシュアップされた事に、膝を付き頭を垂れてしまった。どんだけ化けるんだこいつ。
改めて曲の凄みを感じたのは「STILLNESS IN TIME」
何でこれレア曲にしてしまったよ?はぁん?
と胸ぐら掴んで壁ドンしてやりたくなるくらいには腹が立っています。
とにかくイントロ〜Aメロのドラムのフレーズ!
マグマが地下で蠢いてる様な低音メインでドコドコ鳴らすおかげで、吹雪のような印象があった音源とはまた違う味になっているんだとわかる。だってサビで完全に噴火しちゃってんじゃん、大噴出じゃん、なのにサビの「WE'RE DISCOURAGED」の「ウィー」が妙にひんやり聴こえて、私の中の温度センサーが混乱し始める。
楽器隊が全体的に重め低めでせめぎ合ってるってのに、ボーカルが妙に冷たい質感で聴こえる。冷静なわけじゃなく、閉じたような、熱を隠したような。
ただ、ラストサビ前のメロディ変形落ちサビ的な
「WE'RE DISCOURAGED
STILLNESS IN TIME」
あの部分で、表面の氷がヒビ割れ弾け飛ぶような気がした。
見事だった。
氷の破片で見事に私はやられました。
更に、ただ漠然と全体像を聴いている時点では気付かなかったのがOJの仕事人っぷり。
アフタートークでホリエさんが「リハの段階では『かっこよさそう』って思ってたけど、(本番で)イヤモニで聴いたらすごいかっこよかった」と仰ってたのを聞いて、何度目かのお代わりの時にOJの音だけ傾聴してみると、これ曲全体の温度管理OJが担ってんじゃん!どひゃー!と白目剥かせていただきました。
低めの歪んだ音での渋みから全体の音の波より少し高い位置での主メロに抜ける感じなど、絶妙な立ち位置にきちんとOJが立って仕事してる。
漠然と見ていた時、やっぱり有観客のライヴのステージにOJを解き放ってあげたい、解放されたOJを観たい、って思ってたけど、あんな狭い場所でもOJはちゃんと音を解放してたんだな、と。魂までは、緊張もあったようなので何とも言えないけど、あの場所で最高の仕事人をしていた事に気づけて良かったな。それだけで、なんだか未来が明るくなったような気がしたので。
初披露だった「Amazing Story」
15年前に作って世に出しておきながら寝かせておいて、満を持して15年後、一番似合う時に初披露すると言う、根性ひん曲がった彼ららしい歴史の1ページを目撃してしまう。
アフタートークで仰ってたけど、確かにイントロのカウントからの入りは慣れないと良いタイミングで腕を挙げられないヤツだな、と思った上に、ひなっちイヤモニ事件のシンペイさんの「男塾」話プラス口ドラム口ベースのオンパレードを浴びて私はもうこの曲のイントロは笑ってしか聴けない身体になってしまった。
「泳ぐ鳥」がどうしてこんなにシンプルなのに全方位格好良いのかの分析もお話ししたいし「REMINDER」との出逢いや想いも熱く語りたいし、
「AGAINST THE WALL」にどれだけ支えられたかも書き記しておきたい気持ちも山盛りにあるのだけれど、
ここにはそぐわないので、またいつか。
作品としての当時の音像や声の質感を愛している自分としては、アルバムはアルバムとして愛し続けるけれども、今回大きく根や枝葉を広げたように育って奥行きの出た新しい「TITLE」もまた同じように長く愛していきたいので、自分にとって大きく感じたことだけ書き残しておきました。
そして今後断片としてライヴで出逢えたら嬉しい、またいつか、そんな日常の中の非日常としてライヴが行われる世界に戻る事を願っています。
【ライブレポート】ストレイテナー、15年前の「TITLE」をライブで熱演「みんなの顔を思い浮かべながら」(写真20枚)https://t.co/sKfwKmFCex pic.twitter.com/rfVWPSG4eH
— 音楽ナタリー (@natalie_mu) 2020年9月7日